脂肪由来間葉系幹細胞と関節の軟骨再生について

01日 2022年 06月

- 第3回:骨形成、関節の軟骨再生
- 炎症誘発因子の生産抑制、クローン病など炎症性疾患

[特別寄稿 – イ·ビョンチョン ソウル大学獣医学部教授]

MSC(間葉系幹細胞)は免疫調節と炎症を制御する物質を分泌する機能を持っている。 幹細胞の詳しい役割はさらに研究されなければならないが、これまでの研究ではMSCは炎症性腸疾患や関節炎などを含めた多様な疾患で炎症を調節し、組織再生を促進するということが知られている。

しかし、MSCの効果はすべての状況で不変性として適用されるのではなく、炎症性サイトカインの種類と量によって密接に影響を受ける。 炎症性疾患で炎症の性状はしばしば変わる。 免疫微細環境における免疫細胞の機能の動的変化、免疫細胞組成の変化、免疫分子の変化等を考慮してMSC を適用すべきである。

炎症性疾病にMSCを活用

一部の炎症因子はMSCに免疫抑制機能を与えるという。 また、様々な炎症因子とその量の変化は、MSCの免疫調節力の可変性を決定する。 例えば、IL-17 はMSC の免疫抑制機能を調節し、mRNA分解因子を下方修正して炎症因子を形成することでMSC の免疫抑制効果を強化することができる。

最近、研究者たちは、胎盤由来MSCで抗炎症因子(CD200)が高く発現されれば、炎症促進因子の生産を抑制するだけでなく、抗炎症因子と免疫調節因子の生産を増加させ、炎症性疾病の治療に重要な役割を果たすということを発見した。

変形性関節症の治療に安全かつ効果的

また、研究者らは胎盤幹細胞が変形性膝関節症の治療に安全かつ効果的であることを明らかにした。 研究者らは変形性膝関節症患者20人を無作為に二つのグループに分けて、一つのグループは処置群として胎盤由来のMSCを注入し、他のグループは対照群として生理食塩水を注入した。 結果は、幹細胞を注入した患者において、8週目に有意義な改善効果を見せ、投与後24週目にも改善効果を観察できた。胎盤由来のMSCは出血性膀胱炎患者の生存率も大きく向上させることができる。 他家造血幹細胞移植を受けた84人の患者のうち44人は同時に胎盤MSCも注入した。 その結果、胎盤MSCで治療を受けた出血性膀胱炎患者の1年間の生存率は90%まで高いことが分かった(表1.)。

△表1.間葉系幹細胞に対する複数の臨床試験。 上で使われた幹細胞の種類は、他家または自家の胎盤由来間葉系幹細胞および脂肪由来間葉系幹細胞などと記載されている。 適用疾病としては輸血されたリンパ球が免疫機能の低下した患者の体を攻撃する過程で発生する疾病であるGraft-versus-host disease、変形性膝関節症、変形性関節症、慢性閉鎖性肺疾患、クローン病による肛門瘻、出血性膀胱炎などだ。 Sampleでは処置した患者の数が示されており、Operationは処置方法が、そして結果と参考文献を紹介している。 参考文献は Gao et al., Mesenchymal stem cells: ideal seeds for treating diseases, Human Cell(Published: 16 July 2021) にある。(出典; Human Cell. 2021 Jul 16;1-16. doi: 10.1007/s13577-021-00578-0.)

脂肪由来間葉系幹細胞、関節軟骨再生

MSCは変形性膝関節症に效果的な役割を果たすだけでなく、関節症、クローン病、そして他の炎症性疾病でも重要な役割を果たす。変形性関節症(I-II相臨床実験)を治療するために自家脂肪由来間葉系幹細胞を関節腔に局所的に注入した研究はその代表的な例だ。 注入後、関節の局所炎症反応と痛みを減らし、膝の機能を改善し、関節軟骨の再生を促進する効果があった。 注入6ヶ月後、WOMAC(Western Ontario and McMaster University)の点数が減少し、KSS(Keen Society Score)の膝の点数とKSSの機能点数が大きく向上した。

クローン病治療、4年後まで再発なし

研究者たちは一緒にクローン病によって発生した肛門瘻(anal fistulas、肛門内側から外側に生じた炎症性穴通路)を治療するために自家MSCを生体分解性物質と共に処置する研究を行った。 結論から言うと、治療後、患者の大部分は4年後まで再発しなかった。

研究グループはクローン病による肛門瘻の患者12人を選んで、患者自身のMSCを培養して増殖させた後、生体吸収性物質と共に肛門瘻などに周期的に注入した。 治療6ヶ月後、10人の患者において肛門瘻は完全に閉鎖され、2人の患者が好転し、MSC治療と関連する深刻な合併症は発生しなかった。 したがって幹細胞はクローン病による肛門瘻治療に安全かつ効果的であると発表した。