幹細胞が分泌するエクソソームは腫瘍組織を見つける

01日 2022年 07月

- - 第4回:悪性がん細胞の微小環境調節に貢献

[特別寄稿 – イ·ビョンチョン ソウル大学獣医学部教授]

間葉系幹細胞(MSC)は腫瘍微小環境を構成する主要要素の一つである。 したがって、がんに関する多くの研究がMSCの研究に関するものと考えてもいい。 中胚葉細胞には間葉系幹細胞と悪性がん細胞の微小環境を調節することに寄与する。 一次的造血微小環境の変化は二次的に腫瘍疾患を誘発することができる。

MSCの機能異常は白血病を誘発することもできる。 急性骨髄性白血病はMSCの骨性分化過程を損傷させ、造血過程に必要な因子を下方制御するという研究もある。 がん細胞が特定基質細胞を調節し、正常な組織機能を損傷させ、がんの発生過程を促進するということも明らかになった。

他の研究ではMSCが、がん細胞転移の過程の間、がん細胞によって腫瘍の周辺に惹かれ、腫瘍の発達と転移を促進するため、がん細胞がMSCをがん転移の補助に使えるという研究もある。 幹細胞で特定遺伝子を調節すれば、腫瘍促進転移能力を抑制することもできる。

腫瘍標的治療のための薬物伝達

薬物伝達による腫瘍の標的治療は治療効果を高め、抗がん剤の非特異的毒性を減少させる可能性も研究された。 骨髄由来間葉系幹細胞は特に、腫瘍を含めた炎症のある部位へと移動するものと知られている。 このような機能は抗がん剤特異運搬体の役割も果たすものと予想される。 このような理論に基づき、研究者は効果的な腫瘍治療のためにMSCを抗腫瘍薬物の運搬体として使用している(表2)。

△表2.進行中の間葉系幹細胞に対する主な臨床研究。 幹細胞源泉としては骨髄、成体マウス膵島、エクソソーム等について試験した。 目的疾病としては糖尿病、自己免疫疾患、COVID-19、がん、虚血性疾病、アンチエイジング、変形性関節症、がん治療-遺伝子治療-薬物伝達、早期閉経および臓器移植において試みた。 続いて、各処置において研究の現状を示しており、参考文献は表1.で説明したとおりである。 (出典: Human Cell. 2021 Jul 16;1-16. doi: 10.1007/s13577-021-00578-0.)

インターフェロンアルファ(IFNα)は様々な種類の腫瘍を治療するために臨床的に使用されてきたが、短い半減期であるため、治療効果を高める方法として高用量投与が必要であるが、しばしば深刻な副作用が発生することがある。 そこで研究グループはIFNαを長期間持続的に分泌できるMSCを作って患者に投与することで、これまでの高用量組み換えIFNα投与で発生する深刻な副作用を防ぐことができた。

またIFNαを分泌する幹細胞はB16黒色腫細胞の増殖を効果的に抑制し、黒色腫細胞の死滅を促進できる。 こうした抗がんメカニズムは、natural killer cell とCD8⁺T 細胞と関連がある。 この研究によってMSCは、理想的ながん標的治療剤であり、抗がん薬物を持続的に放出できる運搬体として臨床で活用できる革新的方法により提示した。

インターフェロンガンマ誘導たんぱく質(IP-10)は、抗がん活性を高め、腫瘍退行を媒介する強力な化学誘導剤(chemoattractant)だ。 黒色腫が肺に転移したマウスモデルにおいては、IP-10が分泌するように製作されたヒト脂肪由来間葉系幹細胞を投与した時、腫瘍細胞の成長が抑制され、マウスの生存時間を大きく延長することができた。 これはIP-10が発現するヒト脂肪由来間葉系幹細胞が転移性腫瘍を標的にして黒色種の成長と転移を減らすことができると示唆する。 これは黒色腫治療のための効果的で新しい戦略になり得る。

幹細胞、エクソソームが放出される先で腫瘍組織を発見する

放射線治療は、大腸がん患者の予後を改善するための基本的な処置の一つとして知られている。 大腸がんに対する放射線治療は、がん細胞破壊だけでなく、末梢循環骨髄由来間葉系幹細胞の腫瘍特異性を高め、腫瘍微細環境を再構築させる。

遺伝子指向性酵素プロドラッグ治療(GDEPT, Gene-directed enzyme prodrugtherapy)や自殺遺伝子治療はがん克服のためのもう一つの新しい方法である。 幹細胞は自殺遺伝子を腫瘍細胞に移す遺伝子運搬体として利用されるが、これは幹細胞がエクソソームを分泌し、腫瘍組織を探していく特性があるから可能だ。 プロドラッグによる細胞毒性物質が隣接する腫瘍細胞を死滅させることで、抗腫向効果が得られる。 このような幹細胞抗腫瘍標的投与剤は、これまでの腫瘍治療において問題となる抗腫瘍製剤の毒性と副作用を同時に減少させることができる(表2)。

血管新生は腫瘍の塊の成長によく見られる重要な生理学的または病理学的過程だ。 幹細胞は多様な血管新生前駆物質を分泌することができるため、これに対する深い研究も併行されなければならない。