COVID-19治療の確認、幹細胞ワクチンの開発も

01日 2022年 05月

- 2回:免疫調節、自己免疫疾患への適用
- MSC免疫調節能力、自己免疫疾患に効果
- COVID-19による肺炎治療及びワクチン開発

[特別寄稿 – イ·ビョンチョン ソウル大学獣医学部教授]

1998年にMSCが免疫抑制機能を持っていることが報告され、自己免疫疾患治療においてMSCの活用可能性が大きな関心を集めるようになった。 また、MSCが実験室の研究および人体で実際に免疫抑制を調節するということが2002年に初めて立証された。

MSCは、先天的免疫反応と適応免疫反応の両方に強い影響を及ぼし、免疫体系を強力に抑制するというのが大方の見方だ。 それらはTとBリンパ球の活性化と増殖を抑制し,樹上細胞の成熟にも影響を与えることができる MSC は免疫細胞や局所微小環境因子と直接接触することにより、ほとんどの免疫効果細胞(effector cell)の機能に影響を及ぼす。

幹細胞の免疫調節能力

MSCの免疫調節効果は、MSCが分泌するサイトカインによって主にコントロールされることが明らかになっている。 最近ではMSCの細胞死滅と代謝不活性化が免疫調節能力を持っていることがわかり、調節T細胞(regulatory Tcell)と単核球が重要な役割を果たすことが知られている(表2.の4番目の自己免疫疾患臨床研究例で説明されている)。

△表2.進行中の間葉系幹細胞に対する主な臨床研究。 幹細胞源泉としては骨髄、成体マウス膵島、エクソソーム等について試験した。 目的疾病としては糖尿病、自己免疫疾患、COVID-19、がん、虚血性疾病、アンチエイジング、変形性関節症、がん治療-遺伝子治療-薬物伝達、早期閉経および臓器移植において試みた。 続いて、各処置において研究の現状を示しており、参考文献はGaoet al., Mesenchymal stem cells:ideal seeds for treating diseases, Human Cell(Published:16July2021)にある。(出典; Human Cell。 2021 Jul 16;1-16. doi: 10.1007/s13577-021-00578-0.)

最近の幹細胞の免疫調節研究は、T細胞媒介免疫反応に焦点を合わせている。 T細胞によって生成されたインターフェロンガンマ(IFN-α)とTNF-αがサイトカイン(IL-17など)刺激を助けるため、幹細胞に免疫抑制機能を与えるからだ。

一方、他の方向からの研究でもMSCの免疫抑制効果が明らかになっている。 研究によると、低酸素条件下でMSCはインスリン類似成長因子2(IGF-2)を通じて抗炎症および大食細胞の形成を誘導し、Treg(調節T細胞、regulatoryTcells、自家抗原に対する免疫寛容を維持して自家免疫疾病を抑制)分化を促進し、自己免疫疾患を効果的に抑制することが分かった。

COVID-19に幹細胞の活用

COVID-19が全世界を席巻し、多くの研究者が幹細胞を利用してCOVID-19患者を治療できる方法を探している。 COVID-19に感染すると肺炎、リンパ球減少症、リンパ球欠乏及びサイトカインストームによる症状が特徴的に見られる。 現在、MSCを活用した研究はCOVID-19治療を探索する主な研究対象の一つであり、表2.の5項目目にRemestemcel-Lの研究がある(表2)。

Remestemcel-Lは血縁関係のないドナー骨髄から分離培養及び増殖した同種幹細胞治療剤である。 静脈注射に投与されるRemestemcel-Lは炎症性サイトカインの生成を低下させ、抗炎症性サイトカインの生産を増加させ、体内に持っている抗炎症細胞を集めて炎症のある組織に移動させることによって多様な炎症性疾病を治療する。

急性呼吸困難患者の治療

最近、COVID-19感染した患者が死亡する主な原因は、サイトカインストームによる致命的な炎症の結果だ。 Remestemcel-LはCOVID--19急性呼吸困難症候群(ARDS)治療の可能性がある。 研究者らは慢性閉鎖性肺疾患(COPD)患者60人を対象に無作為の偽薬とRemestemcel-Lを処置した。 分析の結果、Remestemcel-Lはコロナ-19急性呼吸困難患者のような炎症を持つ患者において、呼吸機能が有意に改善された(表1)。

△表1.間葉系幹細胞における様々な臨床試験。 上の表で使われた幹細胞の種類は、他家又は自家の胎盤由来幹細胞および脂肪由来間葉系幹細胞などと記載されている。 適用疾病としては輸血されたリンパ球の免疫機能が低下した患者の体を攻撃する過程で発生する疾病であるGraft-versus-host disease、変形性膝関節症、関節症、慢性閉鎖性肺疾患、クローン病による肛門瘻、出血性膀胱炎などだ。 Sampleでは処置した患者の数が現れており、Operationは処置方法が、そして結果と参考文献を紹介している。 参考文献は Gao et al., Mesenchymal stem cells: ideal seeds for treating diseases, Human Cell(Published: 16 July 2021) にある。(出典; Human Cell. 2021 Jul 16;1-16. doi: 10.1007/s13577-021-00578-0.)

このような結果は、COVID-19による急性呼吸困難症候群患者の治療のためにremestemcel-Lを使用できる理論的根拠を示した。 しかし、COVID-19感染患者の急性呼吸困難治療のためのRemestemcel-L臨床3相試験は30日、死亡率減少目標値を達成できなかった。 臨床試験には300人の患者が含まれ、目標は30日間で死亡率を43%減らすことだった。

一方の研究においては、MSCがCOVID-19に感染した患者の治療に有意な効果があるということが確認された。 COVID-19感染研究によると、重症患者において血漿サイトカインは有意に増加し、このようなサイトカインストームがCOVID-19患者死亡の重要な原因であるとした。 したがって、COVID-19患者にMSCを処置すれば、副作用なくサイトカインストームを効果的に避けることができ、重症や重篤患者の予後を十分改善できるはずだ。

ウイルスによる急性呼吸困難症候群は主要な死亡原因の一つである。 最近、他の研究ではMSCが持つ固有の免疫調節、細胞増殖と分化及び治癒、抗微生物効果は急性呼吸困難症候群の治療に大きな潜在力を持っていると報告した。

COVID-19予防、幹細胞ワクチン開発

しかしこのような治療法では根本的な原因を解決することはできない。 最も根本的なことは、どうすればCOVID-19感染を防げるかということであり、パンデミック状況を克服するためにはワクチン開発が急がれる。

研究者らは新しい幹細胞ワクチンの開発にも乗り出した。 彼らは同種MSCの注入特性と免疫調節機能を活用してコロナウイルスの構造タンパク質を過度に発現する幹細胞を作り、これらがウィルス性たんぱく質を持続的に生産する微細工場の役割をすることで、幹細胞を注入すればまるでウィルスが感染したような条件を作る方法でワクチン開発を研究した。

マウスを対象にコロナウイルスタンパク質を生産する幹細胞を皮下注射および筋肉内注射後、わずか20日後に形成されたコロナウイルス抗体を血清ELISA分析を通じて、成功的に検出することができた。 同時に多様なコロナウイルス構造たんぱく質の多様な変形をMSCで発現させると、変異ウイルスに対抗するためのカクテル効果を達成し、幹細胞ワクチンの成功率を大きく向上させることができると研究者たちは明らかにした。

こうした試みは新しい観点から幹細胞ワクチンの効率性と安全性を確認することができ、ワクチン開発に新しい視点を提供している。 幹細胞ワクチン開発は、COVID-19以外の様々な病原体に対抗した方法としても重要な意味を持っている。

現在、多くの病原体に対する効果的な抗体を持っていないため、従来のワクチンプラットフォームには限界がある。 研究者らが幹細胞ワクチンプラットフォームを成功的に構築すれば、今後、ワクチンの研究開発に向けた新たな方向性を示すことができるだろう。

幹細胞に対する免疫調節特性、抗炎症特性および損傷した組織を治癒する特性に対する多くの研究が、今回のウイルス退治に努力する人類に重要な役割を果たすものと期待される。