慢性疼痛

慢性疼痛

※以下の論文等は、MSC投与により、抗炎症作用が認められた内容になります。

1)Intervertebral disc repair by autologous mesenchymal bone marrow cells: a pilot study.
(Orozco, Lluis, et al., Transplantation 92.7 (2011): 822-828.)
細胞由来:自家骨髄由来間葉系幹細胞
試験の区分:臨床試験
参加患者数:10名(椎間板変性症の患者)
投与方法:髄核投与

【要約】

椎間板変性症の治療のため、慢性腰痛を伴う椎間板変性症患者10人を対象に自家骨髄由来間葉系幹細胞を髄核に投与した。投与は1回のみであり10±5☓106cells/discの細胞数で投与を行った。また、投与後3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月に「腰痛」、「坐骨神経痛」、「Oswestry障害指標」をVAS評価方法を用いて評価を行った。その結果は以下の表のとおりである。

評価項目VAS数値(0~100)
03ヶ月6ヶ月12ヶ月
腰痛(n=10)68.926.521.620.0
坐骨神経痛(n=6)37.024.37.85.3
Oswestry障害指標(n=10)25.013.09.47.4

また、ディスクの再生を確認するため、ディスクの高さおよび水分含量を確認した。その結果、ディスクの高さは再生できなかったが水分含量は自家骨髄由来間葉系幹細胞の投与後12ヶ月で増加していることを確認した。これらの結果より、椎間板変性症の患者に対して外科手術を行わなくても自家骨髄由来間葉系幹細胞の投与により患者の疼痛の軽減が期待できる。

これらの結果より、椎間板変性症の患者に対して外科手術を行わなくても自家骨髄由来間葉系幹細胞の投与により患者の疼痛の軽減が期待できる。



2)下記の資料はJASCから製造された特定加工物を用いて、クリニックが患者様に対して疼痛治療で細胞提供をした後の追跡調査資料になります。(定期報告)

・対象期間2016年~2018年
・対象患者数608人
・投与方法静脈投与
・有効性608人の内、効果があった患者数は471人(全体77%が改善)

また、この期間の内、投与を行った患者様から発生した有害事象(AE)は軽症であり、自然治癒などにより皆様回復されました。また、深刻な有害事象(SAE)は認められませんでした。 従って、自家脂肪由来間葉系幹細胞を用いた慢性疼痛の治療は安全であり有効性が期待されます。

〈 第2西原クリニックの定期報告-(1) 〉
①提供期間:2016~2017年
②投与方法:静脈投与
③投与患者数:323人(関節リウマチ:45人/繊維筋疼痛:44人/複合性局所疼痛症候群:234人)

【内容】

2016年から1年間、第2西原クリニックで炎症による疼痛の改善のため、自家脂肪由来間葉系幹細胞を投与した患者に対して投与後、疼痛の改善を調べた。投与による安全性を確認した結果、治療を受けた323人の中、10人から有害事象(悪寒、注射部位からの炎症、頭痛など)が確認されたが、症状の程度が軽いため、自然治癒および薬で完治された。さらに、深刻な有害事象(SAE)が確認できなったことから、自家脂肪由来間葉系幹細胞の静脈投与が安全であると判断した。有効性評価では自家脂肪由来間葉系幹細胞を投与した患者に対して問診などにより「疼痛」の程度を以下のような内容で評価した。

段階内容
1全く効果なし。(症状の進行)
2効果なし。(症状の進行が遅い)
3変化なし。(現状維持)
4効果あり。
5優れた効果。

各症状の患者から疼痛が「4」以上に該当する患者を確認した結果、関節リウマチは62.2%(45人の中、28人)、繊維筋疼痛は75%(44人の中、33人)、複合性局所疼痛症候群は78.6%(234人の中、184人)であることを確認した。 これらの結果より、炎症による疼痛の改善する目的で投与する自家脂肪由来間葉系幹細胞は安全であり有効性が期待される。

〈 第2西原クリニックの定期報告-(2) 〉
①提供期間:2017~2018年
②投与方法:静脈投与
③投与患者数:285人(関節リウマチ)

【内容】

2017年から1年間、第2西原クリニックで炎症による疼痛の改善のため、自家脂肪由来間葉系幹細胞を投与して関節リウマチ患者に対して投与後、疼痛の改善を調べた。投与による安全性を確認した結果、総投与人である285人の中、2人から有害事象(悪寒、発熱、注射部位からの炎症)が確認されたが、症状の程度が軽いため、自然治癒で完治された。さらに、深刻な有害事象(SAE)が確認できなったことから、自家脂肪由来間葉系幹細胞の静脈投与が安全であると判断した。有効性評価では自家脂肪由来間葉系幹細胞を投与した関節リウマチ患者から問診などにより「疼痛」の程度を以下のような内容で評価した。

段階内容
1全く効果なし。(症状の進行)
2効果なし。(症状の進行が遅い)
3変化なし。(現状維持)
4効果あり。
5優れた効果。

その結果、疼痛の改善が「4以上」である患者は79.3%(285人の中、226人)であることを確認した。

これらの結果より、炎症による疼痛の改善する目的で投与する自家脂肪由来間葉系幹細胞は安全であり有効性が期待される。

以上の結果から、ヒトにおける脂肪由来間葉系幹細胞はTNF-αなどの炎症誘発因子の量を低下させ、IL-10のような抗炎症サイトカインを増加させることにより抗炎症効果を高め慢性炎症による疼痛緩和の有効性が示唆されると判断した。



3)Anti‑inflammatory effects of bone marrow mesenchymal stem cells on mice with Alzheimer's disease.
(Wei, Yan, et al., Experimental and therapeutic medicine 16.6 (2018): 5015-5020.)
細胞由来:ヒト骨髄由来間葉系幹細胞
試験の区分:動物試験
投与方法:静脈投与

【要約】

アルツハイマー病の患者は正常の人より体内および脳から炎症誘発サイトカインの量が多いと報告されている。そこで、抗炎症効果があると知られている間葉系幹細胞が一つの治療方法として期待されている。そこで、本試験ではアルツハイマー病モデルマウスを用いてヒト骨髄由来間葉系幹細胞による抗炎症効果を確認する。その結果、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞を投与したアルツハイマー病モデルマウスグループからはMorris water maze testの脱出時間が改善されることを確認した。また、各グループマウスの血液から炎症誘発サイトカインであるIL-1、IL-2、TNF-α、IFN-γおよび抗炎症サイトカインであるIL-10量をELISA法で確認した。

グループIL-1IL-2TNF-αIFN-γIL-10
コントロール43.3659.3349.5539.4454.22
アルツハイマー病モデルマウス143.21121.32109.22108.2341.21
幹細胞を投与したアルツハイマー病モデルマウス53.2167.3555.2144.4347.43

また、Aβ1-42、BACE1遺伝子、A2M遺伝子に関しては 幹細胞を投与したアルツハイマー病モデルハウスからは回復される結果を確認した。

これらの結果より、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞は炎症誘発サイトカインの量を減少させ、抗炎症サイトカインの量を回復させることから抗炎症効果やAβ関連遺伝子の発現をコントロールする効果によってアルツハイマー病の改善に期待される。



4)Adipose-derived mesenchymal stem cells alleviate experimental colitis by inhibiting inflammatory and autoimmune responses.
(González, Manuel A., et al., Gastroenterology 136.3 (2009): 978-989)
細胞由来:ヒト脂肪由来間葉系幹細胞
試験の区分:動物試験
投与方法:静脈投与

【要約】

大腸炎の治療のため、大腸炎モデルマウスを用いてヒト脂肪由来間葉系幹細胞(hASC)を静脈投与し改善を確認した。

hASCを投与した大腸炎モデルマウスでは大腸炎Scoreが低下、「寿命」、「体重」、「組織学的な評価」からhASCの投与により大腸炎が改善されることを確認した。

また、hASCを投与した大腸炎モデルマウスから炎症誘発サイトカインであるTNF-α、IFN-γ、IL-6、IL-1β、IL-12の変化および抗炎症サイトカインであるIL-10の変化を確認した。その結果、hASCを投与した大腸炎モデルマウスからTNF-α(0.94ng/㎖→0.42ng/㎖)以外のすべての炎症誘発サイトカインの量が有意に減少する結果を確認した。また、IL-10に関しては、hASCを投与した大腸炎モデルマウスから有意に増加することを確認した。

さらに、動物試験からhASCはTh1細胞の増殖および活性化されたRegulatory T細胞の機能を低下させることを確認した。

これらの結果より、hASCは体内から炎症誘発サイトカインを低下させる機能、抗炎症サイトカインは増加させる機能、免疫寛容(Immune tolerance)機能からCrohn病には有効な治療方法になると期待される。



5) Autologous bone marrow-derived mesenchymal stromal cell treatment for refractory luminal Crohn's disease: results of a phase I study.
(Duijvestein, Marjolijn, et al., Gut 59.12 (2010): 1662-1669)
細胞由来:自家骨髄由来間葉系幹細胞
参加患者数:10名(クローン病)
試験の区分:臨床試験(第1相)
投与方法:静脈投与

【要約】

クローン病の治療のため、クローン病患者10人に対して自家骨髄由来間葉系幹細胞(bmMSCs)を2回静脈投与後(1回あたり投与細胞数:1~2☓106 cells/kg)、6週まで観察を行った。その結果、CDAI score(Crohn's disease activity index)の結果からは、9名の患者の内(1名は検査不可能)、5人の患者からCDAI scroeの改善が確認された。また、CDAI scoreの結果から最も改善された患者2名(変化数値:10.0および24.7)に対して内視鏡検査を行った結果、症状の改善を確認した。bmMSCs投与した全患者たちから「大腸粘膜」から炎症誘発・抗炎症サイトカインの量を測定した。その結果、「大腸粘膜」からは炎症誘発サイトカインTNF-α、IL-1b、IL-6が減少し抗炎症サイトカインであるIL-10は増加することを確認した。

これらの結果より、クローン病患者に対して投与した自家骨髄由来間葉系幹細胞は炎症誘発サイトカインを減少させ、抗炎症サイトカインを増加させることで有効な治療方法になると期待する。



6)Regeneration of meniscus cartilage in a knee treated with percutaneously implanted autologous mesenchymal stem cells.
(Centeno, Christopher J., et al., Medical hypotheses 71.6 (2008): 900-908.)
細胞由来:自家腸骨稜由来間葉系幹細胞
試験の区分:臨床試験
参加患者数:3名(変形性膝関節症患者)
投与方法:関節腔内投与

【要約】

間葉系幹細胞がもつ分化および再生能力を利用し、膝の半月板軟骨再生のため、患者の腸骨稜から採収した自家腸骨稜由来間葉系幹細胞を関節腔内投与した。有効性を確認するため「MRI分析による半月板のVolume確認」は投与後1ヶ月、3ヶ月で行い「VAS評価」は投与後3ヶ月で確認した。その結果は以下の通りである。

期間軟骨のVolumeVAS(0~10)
軟骨の表面半月板
投与前 (n=3)466848003.33
投与後1ヶ月 (n=3)46595910-
投与後3ヶ月 (n=3)422859420.13

以上の結果から、間葉系幹細胞の投与によって半月板のVolumeが増加したことから半月板の再生を確認した。また、疼痛の評価である「VAS評価」では3.33点から0.13点まで低下したことから間葉系幹細胞により疼痛が軽減されたと判断した。



7) Disc Regeneration Therapy Using Marrow Mesenchymal Cell Transplantation.
(Yoshikawa, Takafumi, et al., Spine 35.11 (2010): E475-E480.)
細胞由来:自家骨髄由来間葉系幹細胞
試験の区分:臨床試験
参加患者数:2名(70歳、67歳の女性)

【要約】

<患者1(70歳の女性)>
「腰痛(low back pain)」および「右下肢疼痛(right lower leg pain)」の症状がある患者で、手術後1か月で退院し、2か月間コルセットを着用した。手術後6ヶ月で腰痛はなくなり、左下肢からの痺れ感および疼痛も少なくなった。手術後2年目に弱い腰痛が生じたが、VAS評価により腰痛は投与する前と比べ38%改善されていることを確認した。

<患者2(67歳の女性)>
数年間、「腰痛」および「足の疼痛」の症状がある患者で、手術後1か月で退院し、2か月間コルセットを着用した。手術後2年目にレントゲンおよびCT検査で椎間の真空現象は改善された事を確認した。また、手術によって腰痛および下肢の痺れ感、疼痛が改善されたことでVAS評価結果も投与する前と比べ18%の改善となった。

これらの結果から、間葉系幹細胞は椎間板の再生および疼痛の改善が期待される。