顔面再建・皮膚再生治療

顔面再建・皮膚再生治療

Clinical application of human adipose tissue-derived mesenchymal stem cells in progressive hemifacial atrophy (parry-romberg disease) with microfat grafting techniques using 3-dimensional computed tomography and 3-dimensional camera.

Kyung Suk Koh, Tae Suk Oh, Hoon Kim, In Wook Chung, Kang Woo Lee, et. al.
Transplantation surgery and research, Volume 69, Number 3, 331-337, 2012

(概要)
被験者:10名のロンバーグ病患者(男性5人、女性5人、平均年齢28歳)

研究概要:

被験者を2つのグループに分け、一方のグループには脂肪幹細胞の投与と微細脂肪移植術を行い(試験群)、もう一方のグループは微細脂肪移植術のみを行った(対照群)。術後の平均追跡期間は15ヶ月であった。施術当日、腹部の脂肪を採取して、萎縮した顔面に微細脂肪移植術を施行した。脂肪幹細胞は、腹部の脂肪吸引によって採取した脂肪から獲得し、移植に十分な細胞数になる時まで0〜3継代培養し、FACSによって間葉系幹細胞であることを検証した。 試験群の被験者には、移植した微細脂肪20mlあたり1×107個の脂肪幹細胞を投与した。手術後、3次元カメラ(Vectra; Canfield Scientific Inc. USA)と3次元CTスキャンを利用して、移植された脂肪の体積と吸収量を客観的に評価した。施術前、後の血液検査を実施し、有害事象の有無を確認するために、12ヶ月の間、毎月の追跡観察を実施した。

評価方法:

① 有効性評価
1) 肉眼的所見
2) 患者の満足度(VAS score:0-5)
3) 3次元カメラを用いた片側顔面の容積分析
4) 3次元CTを用いた片側顔面の容積分析

結果の概要:

① 有効性評価
1) 2次元測光と患者満足度の分析
片側顔面の軟組織の輪郭を施術1、6、12ヶ月後に評価した。脂肪幹細胞と微細脂肪移植術を一緒に受けた患者(グループ2)は、軟組織の維持と顔面の対称を観察した。一方、微細脂肪移植術のみを受けた患者(グループ1)は、脂肪の吸収を観察した。さらに、患者の平均満足度はグループ1(3.1)よりもグループ2(4.5)の方がより高かった。
2) 3次元写真撮影
ⅰ)3次元カメラの使用における評定者内または評定者間の差違
カメラを使用した片側顔面容積の評価において、誤診を最小限に抑えるため、10人の形成外科医が容積の違いを測定した。評定者内信頼性と評定者間の信頼性の級内相関係数(Intraclass correlation coefficient、ICC)は、それぞれ0.801と0.828であった。
ⅱ)カメラを使用して測定した片側顔面容積の違い
施術後顔面容積変化は、グループ1の患者よりもグループ2の患者で大きくなった(写真1)個人別容積差は、表1に示した。カメラの測定結果、グループ2での片側顔面との間の平均容積の差は21.71 mlで、施術後4.47 mlに減少した(表2)。このグループでの全体の吸収率は20.59%であった。グループ1で施術前の平均容積の差は8.32 mlであり、施術後は3.9 mlに減少した。グループ1からの全吸収率は46.81%であった。2つのグループ間の施術前後の容積差は統計的に明らかに差があった(p-value=0.002)
3) 3次元CT解析
3次元カメラを使用して得られた片側顔面容積をより正確に評価し、その結果を確定するために、施術前と施術6ヶ月後のCTスキャンを実施した。 CTスキャン後、容積表現技術(volume rendering technique、VRT)を使用して片側顔面容積を分析した。 3次元CT解析は3次元カメラの結果と同様の結果を示しています。グループ1よりグループ2で平均脂肪吸収率は2.51倍より低く、地方維持は4倍高かった(p = 0.046; mixed-effects model)。

考察:

本研究の結果により、脂肪由来幹細胞投与と脂肪移植を併用することにより、移植した脂肪組織の生体内への吸収を防ぎ、生着率を高める効果があることが示され、脂肪由来幹細胞投与と脂肪移植の併用がロンバーグ病などの顔面萎縮症状の改善に有効であることが示唆された。また、脂肪由来幹細胞の投与により目立った有害事象は報告されず、脂肪由来幹細胞の顔面への投与は重大な有害事象につながるおそれはなく、安全性を有していることが示唆された。

(提供しようとする再生医療等との関連性)
提供しようとする再生医療等では、ロンバーグ病などの顔面萎縮症状に対して脂肪移植と併用して自己脂肪由来幹細胞の投与を行うが、本研究により、脂肪移植と脂肪由来幹細胞投与を併用することにより、移植した脂肪移植の生着率を高めることができることが示され、脂肪由来幹細胞投与と脂肪移植の併用がロンバーグ病などの顔面萎縮症状の改善に有効であることが示唆された。



Antiaging treatment of the facial skin by fat graft and adipose-derived stem cells.

Luiz Charles-de-Sa et al.
Plastic and Reconstructive Surgery, Volume 135, Number 4, 2015.

(概要)
被験者:美容治療を希望する6名の被験者(男性1名、女性5名)

研究の概要:

被験者から脂肪組織を採取し、以下の手法により加工を行った。
① 脂肪+SVF
遠心分離によりStromal vascular fraction(SVF)を分離し、未処理の脂肪組織と混合した。
② 脂肪由来幹細胞
脂肪から分離したSVFを5週間培養した。
①を患者の顔面の右側に投与し、その5週間後に②を患者の顔面の左側に投与した。投与前及び投与後3か月後に皮膚の一部を採取し、組織学的解析、電子顕微鏡による観察を行った。

結果の概要:

①を投与した部位では、投与後3カ月後に観察した結果、弾性繊維の減少、オキシタラン繊維の増加、微細血管の増加が見られ、肌の若返り効果が示された。②を投与した部位でも、①と同様の若返り効果が見られた。

考察:

本研究の結果より、脂肪組織の投与による肌の若返り効果には脂肪由来幹細胞が重要であり、培養した脂肪由来幹細胞のみを投与した場合でも脂肪組織を投与した場合と同等の効果が得られることが示された。

(提供しようとする再生医療等との関連性)
提供しようとする再生医療等では、しわ、たるみなどの加齢症状の改善を目的として培養した自己脂肪由来幹細胞を投与するが、本研究より、培養した脂肪由来幹細胞のみを投与した場合でも、肌の若返り効果が得られることが示された。



Cell-assisted lipotransfer for facial lipoatrophy: efficacy of clinical use of adipose-derived stem cells

Kotarao Yoshimura et al.
Dermatol Surg, 34:1178-1185, 2008

(概要)
被験者:顔面脂肪萎縮症の患者6名(深在性エリテマトーデス5名、ロンバーグ病1名)

結果の概要:

6名の被験者を以下の2グループに分け、脂肪移植を行った。
① Non-CAL
通常の手法により、脂肪移植を行った。
② CAL
採取した脂肪の半分からStromal vascular fraction(SVF)を分離し、残り半分の未処理の脂肪と混合することにより、ASC-rich fat(脂肪由来幹細胞を豊富に含む脂肪)を作製し、移植を行った。
投与後9~13カ月の間経過観察を行い、投与部位の体積の増加をexcellent, good, fair, poorの4段階で評価した。

研究の概要:

脂肪移植の結果、一部の被験者で投与部位に内出血が見られたが、1~2週間で回復した。また、投与部位の腫れが見られたが、約4週間で回復した。Non-CALの被験者の内一名で投与した脂肪組織のネクローシスが見られた。Non-CAL、CALの全ての被験者で投与部位の増大が認められたが、CALの被験者ではNon-CALの被験者に比べてより高い治療効果が見られた。しかしながら、統計学的な有意差が認められなかった。

考察:

本研究により、脂肪単独での移植よりも、分離したSVFを混合して移植することにより移植した脂肪の生着率が高まることが示された。

(提供しようとする再生医療等との関連性)
提供しようとする再生医療等とは、脂肪から分離したSVFを培養し、脂肪由来幹細胞としてexpandしたものを治療に用いる点、脂肪組織とは混合せずに別々に投与を行う点が異なるが、本研究により脂肪由来幹細胞の投与により、脂肪移植による脂肪の生着率が向上することが示された。



Cell-assisted lipotransfer for the treatment of Parry-Romberg Syndrome

Yanko Castro-Govea et al.
Archives of plastic surgery, 39:659-662,2012

(提供しようとする再生医療等との関連性)
提供しようとする再生医療等とは、脂肪から分離したSVFを培養し、脂肪由来幹細胞としてexpandしたものを治療に用いる点、脂肪組織とは混合せずに別々に投与を行う点が異なるが、脂肪組織の定着を補助するために脂肪由来幹細胞を投与する点が同じであるため、類似の再生医療等に該当し、安全性、有効性を評価する参考になると判断した。



Adipose-derived stem cells and their secretory factors as a promising therapy for skin aging.

Byung-Soon Park et al.
Dermatol Surg, 34:1323-1326,2008

(概要)
Pilot studyとして、1名の光老化の患者に脂肪から分離した脂肪由来幹細胞(purified autologous processed lipoaspirate)を顔面に投与した。重大な有害事象は認められず、投与後2カ月後の肉眼観察の結果、明らかなしわの改善効果が確認された。

(提供しようとする再生医療等との関連性)
提供しようとする再生医療等とは、脂肪から分離したSVFを培養し、脂肪由来幹細胞としてexpandしたものを治療に用いる点が異なるが、本研究により、脂肪由来幹細胞の投与がしわなどの加齢症状の改善に有効であることが示唆された。



Anti-wrinkle effects of adipose tissue-derived mesenchymal stem cells in a UV-irradiated hairless mouse model

Bae-Hwan Kim et al.
Tissue engineering and regenerative medicine, Vol. 7, No.5, 583-591, 2010

(概要)
実験動物:Hairless Mouse

研究の概要:

UV処理によりしわの形成を誘発したHairless mouseを以下の5つのグループに分け、UV処理から12週間後に投与を行った。
① 生理食塩水(皮膚、5か所)
② 0.01%レチノイン酸(経口投与)
③ 脂肪由来幹細胞(7.5×104 cells/60μl、皮膚、5か所)
④ 脂肪由来幹細胞(3×105 cells/60μl、皮膚、5か所)
⑤ 脂肪由来幹細胞(1.2×106 cells/60μl、皮膚、5か所)

評価方法:

投与後1週間及び4週間後に経過観察を行った。
① 安全性評価
② 有効性評価
1) 成長因子分泌解析
2) 画像解析
3) しわの測定
4) 組織学的解析
5) 遺伝子発現解析

結果の概要:

① 安全性評価
脂肪由来幹細胞を投与することによる免疫反応などの副作用は見られず、体重や摂食量にも顕著な変化は見られなかった。
②有効性評価
1) 成長因子分泌解析
ELIZAにより、脂肪由来幹細胞が分泌する成長因子について解析を行った結果、脂肪由来幹細胞はbFGF, KGF, TGF-1β1, HGF, Procollagen, Fibronectin, VEGFを分泌することが示された。
2) 画像解析
画像解析の結果、脂肪由来幹細胞を投与したグループでは生理食塩水を投与したネガティブコントロールのグループと比較して顕著な水分量の上昇が見られた。
3) しわの測定
皮膚のレプリカを作製し、しわの測定を行った結果、脂肪由来幹細胞を投与したグループではネガティブコントロールと比較してしわの減少、改善が観察された。
4) 組織学的解析
組織学的解析により皮膚の厚さを解析した結果、脂肪由来幹細胞を投与したグループではネガティブコントロールと比べて皮膚の厚さの減少が見られた。
5) 遺伝子発現解析
RT-PCRによりMMP-3の発現を解析した結果、脂肪由来幹細胞を投与したグループのうち、④、⑤のmid dose、high doseの脂肪由来幹細胞を投与したグループでは、ネガティブコントロールと比較して顕著にMMP-3の発現が減少していた。

考察:

安全性評価の結果、脂肪由来幹細胞の投与によって目立った有害事象は認められず、脂肪由来幹細胞の投与は安全性を有していることが示唆された。ELIZAによる成長因子分泌解析の結果、脂肪由来幹細胞は多様な成長因子を分泌しており、これらの成長因子の働きによりしわの改善に働いていることが示唆された。UV処理により、皮膚の水分量が減少することが知られているが、脂肪幹細胞を投与することにより皮膚の水分量が増加していた。また、UV処理により皮膚が肥大化することが知られているが、脂肪由来幹細胞の投与により皮膚の肥大化が改善されることが示された。レプリカ解析の結果、脂肪由来幹細胞の投与によりしわの減少も観察され、脂肪由来幹細胞の皮膚への投与は光老化によるしわなどの加齢症状の改善に有効であることが示唆された。

(提供しようとする再生医療等との関連性)
本研究により、脂肪由来幹細胞の投与によるしわ、たるみの改善の作用機序が解明され、脂肪由来幹細胞の皮膚への投与がしわ、たるみなどの加齢症状の改善に有効であることが示唆された。