自己免疫疾患

自己免疫疾患

Stem cell treatment for patients with autoimmune disease by systemic infusion of culture-expanded autologous adipose tissue derived mesenchymal stem cells.

Jeong Chan Ra, Sung Keun Kang, Il Seob Shin, Hyeong Geun Park, Sang Aun Joo, Jeong Geun Kim, Byeong-Cheol Kang, Yong Soon Lee4, Ken Nakama5, Min Piao, Bertram Sohl, Andras Kurtz
Journal of Translational Medicine 2011, 9:181

(概要)
被験者:10名の自己免疫疾患患(自己免疫性内耳障害1名、多発性硬化症1名、多発性筋炎1名、アトピー性皮膚炎4名、リュウマチ3名)
10名の自己免疫疾患患者に対して、患者自身から採取した脂肪から脂肪由来幹細胞を分離し、培養を行って自己脂肪由来幹細胞を調製し、静脈投与した。経過観察を行った結果、全ての症例で重大な有害事象は報告されず、症状の改善が認められた。

(提供しようとする再生医療等との関連性)
本文献では、提供しようとする再生医療等と同様に自己免疫疾患の患者を対象に培養した自己脂肪由来幹細胞の静脈投与を行っており、それによる重大な有害事象は報告されず、症状の改善が認められている。本文献より、自己脂肪由来幹細胞の静脈投与の安全性及び自己免疫疾患の改善の有効性が示唆された。



Umbilical cord mesenchymal stem cell transplantation in severe and refractory systemic lupus erythematosus.

Lingyun Sun, Dandan Wang, Jun Liang, Huayong Zhang, Xuebing Feng, Hong Wang et. al.
Arthritis Rheum, Aug; 62(8): 2467-75, 2010.

(概要)
被験者:全身性エリテマトーデスの患者16名

概要:

2007年4月から2009年7月までに、全身性エリテマトーデス患者16人の登録を行い、臍帯由来間葉系幹細胞を投与した。平均追跡期間は8.25ヶ月であった。 SLEDAIスコア、血清ANA数値、抗dsDNA抗体、血清アルブミン、補体C3、腎機能における明確な改善が観察された。また、Treg細胞の増加とTh1-やTh2-サイトカインのバランスの改善も認められた。症状の再発や、治療と関連する死亡、有害事象は報告されなかった。

(提供しようとする再生医療等との関連性)
提供しようとする再生医療等は、自己脂肪由来幹細胞を投与するのに対して、本研究では他家の臍帯血由来幹細胞を投与している点が異なるが、脂肪由来幹細胞と臍帯血由来幹細胞はともに間葉系幹細胞の性質を示し、遺伝子発現なども類似していることから類似の性質を持つ細胞であると判断し、類似の再生医療等であると判断した。本研究により、全身性エリテマトーデスの治療のための間葉系幹細胞の静脈投与の安全性及び有効性が示された。



Autologous mesenchymal stem cells for the treatment of secondary progressive multiple sclerosis: an open-label phase 2a proof-of-concept study

Peter Connick, Madhan Kolappan, Charles Crawley, Daniel J Webber, Rickie Patani, et. al.
Lancet Neurol, Jan9, 2012

(概要)
被験者:多発性硬化症の患者10名

概要:

本研究では、進行多発性硬化症の神経保護治療として間葉系幹細胞の安全性と有効性を評価した。英国の東アングリア(East Anglia)および北ロンドン(north London)地域にて障害の状態指数5.5〜6.5の進行多発性硬化症患者を募集した。参加者は、本研究では自己骨髄由来間葉系幹細胞を静脈内に投与を受けた。 1次評価は、可能性と安全性を評価するもので、治療前の20ヶ月から投与後10ヶ月までの異常反応(adverse events)を比較した。 2次評価は、効能評価で全視覚伝導系障害(anterior visual pathway)の評価を行った。本研究では、10人の患者の間葉系幹細胞を分離して培養した後、特性を把握して投与した。平均投与量はkg当たり1.6X106個の細胞であった。1人の患者は、治療後、一時的に発疹が起きた。2人の患者は、治療後3〜4週間軽い程度の細菌感染が発生したが、深刻な副作用は認められなかった。視力と視覚誘発電位の潜伏期間(visual evoked response latency)と視神経の範囲については、有意な改善が見られた。。色覚、視野、黄斑部容積(macular volume)、網膜神経繊維層の厚さ、視神経磁化伝達率(optic nerve magnetisation transfer ratio)においては明確な改善は認められなかった。

(提供しようとする再生医療等との関連性)
提供しようとする再生医療等は、自己脂肪由来幹細胞を投与するのに対して、本研究では他家の臍帯血由来幹細胞を投与している点が異なるが、脂肪由来幹細胞と臍帯血由来幹細胞はともに間葉系幹細胞の性質を示し、遺伝子発現なども類似していることから類似の性質を持つ細胞であると判断し、類似の再生医療等であると判断した。本研究により、全身性エリテマトーデスの治療のための間葉系幹細胞の静脈投与の安全性及び有効性が示された。



Reversal of serologic, immunologic, and histologic dysfunction in mice with systemic lupus erythematosus by long-term serial adipose tissue-derived mesenchymal stem cell transplantation.

Eun Wha Choi, Il Seob Shin,2 So Young Park, Ji Hyun Park, Jong Sung Kim, et. al.
ARTHRITIS & RHEUMATISM, Vol. 64, No. 1, January 2012, pp 243–253

(概要)
実験動物:マウス

実験の概要:

(NZB×NZW)F1マウス(全身性エリテマトーデスモデルマウス)に、6週齢から60週齢まで2週間に一回、培養したヒト脂肪由来幹細胞を静脈投与した。対照群には、同様のタイムスケジュールで生理食塩水の投与を行った。また、32週齢のマウスを用いて同様の実験を行った。

結果の概要:

合計28回のヒト脂肪由来幹細胞の投与を行った結果、有害事象は見られなかった。ヒト脂肪由来幹細胞の投与を行ったマウスでは、対照群のマウスと比較し、生存率の上昇、タンパク尿の減少、抗double-storanded DNA抗体及び血中尿素窒素の減少、血清中のGMCFS、IL-4、IL-10の増加、CD4+FoxP3+細胞(Treg細胞)の増加が見られ、全身性エリテマトーデスの症状の改善が認められた。32週齢のマウスを用いて同様の実験を行った結果、6週齢のマウスと比べてヒト脂肪由来幹細胞の投与による症状の改善効果は低かった。

考察:

ヒト脂肪由来幹細胞の投与により、全身性エリテマトーデスの症状が組織学的、血清学的、免疫学的に完全することが示され、全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患の症状の改善に脂肪由来幹細胞の投与が有効であることが示唆された。

(提供しようとする再生医療等との関連性)
提供しようとする再生医療等では、全身性エリテマトーデスを含む自己免疫疾患の症状の改善を目的として自己脂肪由来幹細胞の静脈投与を行うが、本研究により、動物モデルにおける自己免疫疾患の症状の改善に対するヒト脂肪由来幹細胞の静脈投与の安全性及び有効性が示された。



The therapeutic efficacy of human adipose tissue-derived mesenchymal stem cells on experimental autoimmune hearing loss in mice

Yixuan Zhou, Jingdong Yuan, Bin Zhou, Austin J. Lee, Albert J. Lee, Maher Ghawji Jr, et. al.
Immunology, 133, 133-140, 2011

(概要)
実験動物:マウス

実験の概要:

実験用マウス(BALB / c mouse)にβ-tubulin免疫法により自己免疫性難聴を誘発した。この動物モデルに6週間続けて1週間に1回ずつヒト脂肪由来幹細胞または生理食塩水を腹腔内投与した。聴性脳幹反応検査(auditory brainstem response)で時間の延長を測定した。Th1/Th17媒介性自己反動反応(autoreactive response)は、β-tubulinに刺激された脾臓細胞(splenocyte)の増殖反応とサイトカイン面の評価を介して試験した。また、調節T(Treg)細胞の頻度と自己反動T細胞のこれらの抑制能力の評価を行った。

結果の概要:

脂肪由来幹細胞の全身性投与は、聴覚機能を明確に改善させ、有毛細胞(hair cell)を保護した。ヒト脂肪由来幹細胞の投与により、抗原特異Th1 / Th17細胞の増殖を減少させ、脾臓細胞からの抗炎症サイトカインインターロイキン-10(interleukin-10)の発現上昇が見られた。また、抗原特異T細胞反応を抑制する能力を持っている抗原特異CD4(+)CD25(+)Foxp3(+)Treg細胞の増加が認められた。

考察:

本研究により、ヒト脂肪由来幹細胞の投与により、エフェクターT細胞を抑制し、抗原特異Treg細胞を誘導することにより、自己免疫疾患の症状の改善に有効であることが示唆された。

(提供しようとする再生医療等との関連性)
提供しようとする再生医療等では、自己免疫性難聴を含む自己免疫疾患の症状の改善を目的として自己脂肪由来幹細胞の静脈投与を行うが、本研究により、脂肪由来幹細胞の投与はエフェクターT細胞の抑制や、抗原特異Treg細胞の誘導に働き、自己免疫疾患の症状の改善に働くという作用機序が解明された。本研究により、動物モデルにおける自己免疫疾患の症状の改善に対するヒト脂肪由来幹細胞の静脈投与の安全性及び有効性が示された。