変形性関節症

変形性関節症

Intra-articular injection of mesenchymal stem cells for the treatment of osteoarthritis of the knee: A proof-of-concept clinical trial.

Jo CH, Lee YG, Shin WH, Kim H, Chai JW, Jeong EC, Kim JE, Shim H, Shin JS, Shin IS, Ra JC, Oh S, Yoon KS.
Stem Cells. 2014 May ; 32(5) : 1254-66. do i: 10.1002/stem. 1634. [Epub ahead of print] PMID : 24449146

被験者 変形性膝関節症の患者18名
研究デザイン 第1相、第2相臨床試験

研究の概要:

第1相として、low-dose(1.0×107個)、mid-dose(5.0×107個)、high-dose(1.0×108個)の自家脂肪由来幹細胞を各3人の患者に投与を行った。また、第2相として、9人の患者にhigh-dose(1.0×108個)の自家脂肪由来幹細胞を投与した。脂肪由来幹細胞は、3mLの生理食塩水と共に関節腔内注射により投与し、投与に伴ってデブリードマン、滑膜除去、半月板除去などは行っていない。

評価方法:

経過観察は投与後1ヶ月、2か月、3か月、6か月後に行った。一次アウトカムとして、安全性の確認とWestern Ontario and McMaster University Osteoarthritis Index(WOMAC)を用いた評価を行った。2次アウトカムとして、臨床的、放射線学的、関節鏡的、組織学的な解析を行った。

結果の概要:

治療の結果、7人の患者に関節痛などの軽微な有害事象が見られたが、いずれもクリニック内での処置により改善し、有害事象により継続不可能となった患者はいなかった。臨床的、放射線学的、関節鏡的、組織学的な解析の結果、いずれもhigh-doseの自家脂肪由来幹細胞を投与した患者群では顕著な改善が見られたのに対し、low-dose、mid-doseの患者群では緩やかな改善しか見られなかった。

考察:

本研究結果より、脂肪由来幹細胞の関節腔内注射による投与は重篤な副作用や有害事象も見られず、変形性関節症に対する有効な治療方法であることが示された。また、治療の効果は量依存的であり、有効な治療を行うためには十分な量の脂肪由来幹細胞を投与することが必要となることがわかった。

(提供しようとする再生医療等との関連性)
本研究により、提供しようとする再生医療等の安全性及び有効性が示された。提供しようとする再生医療等における脂肪由来幹細胞の投与方法、投与量等、主要な治療方法等はこの報告を参考に策定している。



Intra-articular injection of autologous mesenchymal stem cells in six patients with knee osteoarthritis.

Emadedin M, Aghdami N, Taghiyar L, Fazeli R, Moghadasali R, Jahangir S, Farjad R, et al.
Arch Iran Med. 2012; 15(7): 422 – 428.

被験者 変形性膝関節症の患者6名
研究デザイン 臨床試験(対照群なし)

研究の概要:

6人の変形性膝関節症の患者に対して、培養した自家骨髄由来間葉幹細胞を投与し、治療の効果を検証した。20~24×106個の骨髄由来間葉幹細胞を懸濁した4mLの血清を関節腔内注射により投与した。

評価方法:

経過観察は投与2週間、1か月、2か月、6か月、12か月後に行い、歩行能力、関節の可動域等についての検査とVAS, WOMACを用いた評価を行った。また、治療前と治療6か月後にMRI検査を行い、患部の状態の検査を行った。

結果の概要:

経過観察の結果、6人全ての患者で、目立った副作用や有害事象は見られず、全ての患者が治療結果に満足していると答えた。VAS、WOMAC、歩行能力、関節可動域等、全ての項目で改善が見られたが、6か月後の状態に比べ12か月後は若干の状態の悪化が見られ、6か月後に2回目の治療が必要であることが示唆された。また、MRI検査の結果、6人中3人で患部の状態の改善が見られ、MRI検査の結果とWOMACスコアには関連性が見いだされた。

考察:

本研究より、骨髄由来間葉幹細胞の投与は、重篤な副作用や有害事象は見られず、変形性関節症の有効な治療法となりうることが示された。しかしながら、治療の効果は永続的なものではなく、半年に1回程度の頻度で再投与を行わなければならないことが示唆された。

(提供しようとする再生医療等との関連性)
自家骨髄由来幹細胞を用いて変形性膝関節症の治療を行っており、脂肪由来幹細胞と骨髄由来間葉幹細胞の性質の類似性から、類似の再生医療等であると判断した。培養した細胞を用いている点、関節腔内注射により投与している点が共通しているため、安全性や妥当性を判断するための参考となると判断した。



Infrapatellar fat pad-derived mesenchymal stem cell therapy for knee osteoarthritis.

Yong-Gon Koh, Yun-Jin Choi
Knee. 2012 Dec;19(6):902-7. doi: 10.1016/j.knee.2012.04.001. Epub 2012 May 14. PMID: 22583627

被験者 変形性膝関節症の患者25名
研究デザイン 臨床試験(対照群あり)

研究の概要:

5人の変形性膝関節症の患者に対して、膝蓋下脂肪体由来の幹細胞を投与し、治療の効果を検証した。 患者の膝蓋下脂肪体から脂肪を採取し、脂肪由来幹細胞を分離した。デブリードマン、滑膜除去、変形組織の除去などの処置を行ったのちに、平均1.89×106個の脂肪由来幹細胞を3mlの多血小板血漿に懸濁し、関節腔内注射により投与した。また、コントロールとして、25人の患者に多血小板血漿のみの投与を行った。試験群、対照群ともに1週間ごとに3回、多血小板血漿の投与を行った。

評価方法:

経過観察は治療前、3か月後、最終来院時(平均16,4か月後)に行い、Lysholm score、Tegner activity scale、VASにより評価を行った。また、X線検査により患部の状態を検査した。

結果の概要:

投与直後の数日の間に、数人の患者が軽い患部の痛みを訴えたが、数日中に自然に回復し、重篤な副作用や有害事象は見られなかった。経過観察の結果、多血小板血漿のみを投与した対照群でも、Lysholm score、Tegner activity scale、VASの改善が見られたが、脂肪由来幹細胞と多血小板血漿を投与した試験群ではより顕著な改善が見られた。

考察:

本研究により、膝蓋下脂肪体由来の幹細胞の関節腔内注射による投与は、重篤な副作用や有害事象は見られず、変形性膝関節症の治療に有効であることが示唆された。

(提供しようとする再生医療等との関連性)
本報告では、脂肪由来幹細胞を用いて関節腔内注射により変形性関節症の治療を行っている点については提供しようとする再生医療と共通しているが、脂肪由来幹細胞の由来(膝蓋下脂肪体由来)や、脂肪由来幹細胞を培養せずに投与している点、脂肪由来幹細胞を多血小板血漿と共に投与している点、投与する脂肪由来幹細胞の細胞数(平均1.89×106個)、投与する前にデブリードマンなどの処置を行っている点は異なる。しかしながら、脂肪由来幹細胞の投与による変形性関節症の治療の安全性、有効性が示されており、提供しようとする再生医療等の安全性、有効性を評価するための参考となると判断した。



Clinical Efficacy and Safety of the Intra-articular Injection of Autologous Adipose-Derived Mesenchymal Stem Cells for Knee Osteoarthritis

A Phase III, Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial

※詳しくはこちら PDF